音楽家 太田美帆さんの定期演奏会の第8回。今季は聖歌や古楽を中心に、独唱や自ら主宰するコーラスプロジェクト「U+TA(ユタ)」との取り合わせによる声の重ね色目にてお送りしています。

音楽の由来は遠い時代、洋の東西を問わず、数学や物理学、天文学や農学などの自然科学、つまりわたしたちが生きる世界の真理を知るための物事の計測から生じたのではないかといわれています。

調和する音・リズム、心を揺さぶる音の重なりや並びは、音楽的精神性よりも前に、すでに世界に存在する自然の法則から発見されていったものなのかもしれません。

この点において、彼女の扱うグレゴリオ聖歌からバッハあたりまでの音楽は、音楽そのものの根に深く密接したところで創造行為が行われていたのではないでしょうか。

太田美帆さんの感性を通じて仕立てられる古の音楽は、普遍的な美しさと新しさとが共存する独特の雰囲気をもってわたしたちを素直に震えさせます。ぜひお間近で空間に漂う響きの名残りまでお愉しみください。